ゲーム業界の品質管理は、組織によっては開発の下請け的な立場だったり誰でも出来る仕事と軽視されたりすることがあります。
例えば、品質管理のことであるにも関わらず主導権や決定権が開発にあったり、品質管理の雇用条件が契約社員orアルバイトであるのに対して他の職種は正社員採用が前提になっている、といったことがあります。
果ては品質管理部の解体といったことまで起きたりします。
これは実際に私も体験しましたが、その話をされたときは大きな衝撃とともに品管軽視を感じて落胆しました。
今回は、その品質管理部が無くなったときのことをお話したいと思います。
品質管理部の立ち位置
約10年前に転職活動をしていた際に、あるゲームパブリッシャーの面接を受けました。
仮にA社と呼ばせていただきますが、そのA社では品質管理部の基盤が出来ておらず体制としてうまくまわっていないことが課題で、そこを立て直せる人材を探しているということでした。
結果としてご縁がありA社に入社となるのですが、その品管は以下のような状況でした。
・元々はプロジェクトごとにテスターがいて品管は無かった ・組織として独立して約1年 ・メンバー構成は正社員3人(部長含む)、アルバイト約10人 ・品管部長は籍だけあるような形で実質関わりが無い ・タイトルごとにメンバーを固定アサイン ・稼働タイトルは3タイトル
品質管理部として独立してまだ1年程度で、とりあえず目の前のテストをこなしているだけで品管としての組織的な動きは出来ていない状況でした。
私は入社早々に状況把握のため、あるモバイルゲームの運営テストに参加をすることになりました。
が、このタイトルで品管の窓口になっているプランナーは開発上位の考え方が強く品管を下請け的に捉えており、実際既存のテストメンバーも開発の指示に従っているような状況でした。
私はこの状況が嫌で、品管としての考えや意見を述べるようにし、時にはそのプランナーと衝突しながらも品管を良くしていこうと活動していましたが……入社して3~4か月経ったある日、それまでほとんど話したことも無かった品管部長に呼び出され、翌月から品質管理部が無くなることを告げられたのです。
なぜ品質管理部が解体されたか?
それまで何の予兆も無く突如として品管解体を言い渡された形で、品管部長にその理由を尋ねると社長の考えであることがわかりました。
なぜ社長が品管を解体するに至ったかですが、どうやらプロジェクトごとに権限を持たせたくプロジェクトごとに必要な役割をアサインする形にしたかったようです。
それには品管という横串組織は適さず、テスターはプロジェクトごとにいれば良いという考えのようでした。
プロデューサー、ディレクター、プランナーなどゲーム開発の中心的な役割の人たちが品質に対する理解があれば、まだこの形は成り立つとは思います。
しかし、先ほどもお話したように開発上位の考え方が強く品質意識が弱いプロジェクトでは、この体制ではテスト活動はうまくいかないでしょう。
私は納得できないまま、しかし社長の決定であるためそれを覆すことは出来ず、品管部長からは諭されるような形になり受け入れるしかありませんでした。
品質管理部解体後
品管解体後、私はある新規タイトルに参画してテストを行っていました。
このタイトルはまだまだ開発がスタートしたばかりでαテスト段階であったため、正直テストとしてやれることも少なく悶々とした日々を送っていたところ、カスタマーサポートに欠員が出たという話があり急遽テストからカスタマーサポートに配置換えを言い渡されました。
カスタマーサポートの経験は無く、それに準ずるようなスキルも持ち合わせていない私が、急に来週からカスタマーサポートやれと言われてもうまくできるわけがありません。
おまけに業務のレクチャーといったものはほとんどなく、見様見真似でやるしかない状況でした。
品管軽視の風土や私のやりたい仕事ではなかったため、ほどなくしてこのA社を退職しました。
A社には約1年在籍しましたが、得られたものはほとんど無かったように感じています。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
こういった極端な組織はあまりないとは思いますが、実在するのも事実です。
品管の立て直しで入社したのにその3か月後に品管が無くなる……笑い話にもなりません。
A社はまだ存在しますが、その後品管が復活したのか、それともそのままプロジェクトごとにテスターがいる体制が続いているのかはわかりません。
しかし、A社のゲームがユーザーの間で悪い意味で話題になることがあるため、テスト活動がうまくいっていないのかもしれません。
皆様もお気をつけください……とは言いつつも、入社前ではなかなか看破は難しいため、どうしようもないのが現実かもしれません。
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