ゲームの品質管理は大したことなさそう、システム系の品質管理は凄そう、といったイメージを持っていませんか?
これは半分正解で半分間違いになります。
管理人は20年以上のQAキャリアの中で、以下のようなプロダクトに関わってきましたが、業界、システムの種類、開発手法などによって求められるスキルは大きく異なっていました。
その中でも共通して言えることは、プロダクトに異常が出た際に社会的影響が大きいソフトウェアは、品質管理に求められる知識や経験も高くなるということです。
【管理人が関わったプロダクト】 ・コンシューマーゲーム ・フィーチャーフォン向けゲーム ・ソーシャルゲーム ・スマートフォンゲーム ・スマートフォンアプリ ・Webサイト ・Webシステム ・ECサイト
ソフトウェアテストの知識や技術、ソフトウェア開発の知識、業界ごとのドメイン知識などのスキルが高いにこしたことはありませんが、品質管理で大事なのはプロダクトの特性に合わせた最適な活動を行っていくことです。
例えば、金融系ソフトウェアの品質管理をしていた人がゲームの品質管理に移ってきたとしても、金融業界とゲーム業界とでは文化や考え方が大きく異なるため活躍できない可能性があります。
管理人はゲーム業界と非ゲーム業界を行き来していますので、その際に感じたことなどをお伝えしたいと思います。
なぜゲームから非ゲームに?
管理人は品質管理の仕事はコンシューマーゲームからスタートして約10年程ゲームに関わり続け、その中で2回転職を経験していますが非ゲームには関わったことはありませんでした。
品質管理の仕事を始めてから10年して初めて非ゲームのプロダクトを担当することになったのですが、実はその理由は大したものではありません。
キャリアアップのために転職活動をしていた中でゲーム系で良い求人が見つからなかったため非ゲーム系でも探しており、たまたま縁があった会社が非ゲーム系だったという形です。
非ゲーム系に転職して初めてWebシステムのテストリーダーを担当しましたが、約10年のゲーム業界でのキャリアの大半はデバッグリーダーとして管理業務を行っていたため、現場管理には自信を持っており非ゲームでも出来る自信はありました。
初めての非ゲームで感じたこと
まず大きく違ったのがテスト計画を立て、開発陣を含む関係者間で共有するということでした。
ゲームの時はテスト計画などほとんど立てたことがありませんでしたが、非ゲームでは当たり前のようにテスト計画を立てていました。
はじめてテスト計画書を作成する中で特に戸惑ったのが、計画内容に対して根拠や理由などを求められるということでした。
当然といえばそうかもしれませんが、プロダクトに関わるプロデューサーやディレクターは品質管理のプロというわけではないため、品質管理の立場では当たり前の考え方が伝わりません。頭ではわかっていてもそれを言語化するのに苦労しました。
もうひとつ大きく違った点として、テストケースというものを活用していた点です。
ゲームの品質管理ではテストケースというものは作っておらず言葉も知らない状態でしたが、非ゲームでは当然のようにテストケースを作成し使っていました。
当時はテストケースという言葉自体初めて聞くような状態だったため当然作成方法などわからず、現場マネージャーに教わりながらテストケースを作成していきました。
テストケースの作成ではどういう確認が必要かを考えることになりますが、これにはゲーム業界時代の経験が非常に活きました。
ゲームは自由度が高いためバグ探しの活動が多いですが、この時にどういう確認をしていたか、どういうバグが出ていたかなどの経験が役立ち、テストケースの作成は意外とスムーズに進めることが出来ました。
テスト実行が始まってしまえばゲームも非ゲームも大きな差はありませんでしたが、テスト実行までの活動はゲームと非ゲームとで大きく異なることを実感しました。
ゲームと非ゲームの経験年数が同じになってみて…
管理人はゲーム業界で約10年過ごしたあと、今度は非ゲーム業界で約10年過ごしたのですが、『品質管理』の面では非ゲーム業界のほうが大きくスキルアップ・キャリアアップできました。
ゲームは場当たり的な活動が多いのに対し、非ゲームでは事前の計画、戦略、準備を綿密にしていかなければなりません。
これはテスト実行を円滑に進めるためというのもありますが、開発陣も含めて品質に対する意識や取り組みがゲームよりも一段階上であり、品質向上のためにはプロセスの上流からの活動が大事であることを知っているからなのです。
私の経験上では、ゲーム業界で仕様書インスペクション(仕様書に含まれる不備を早い段階で潰すことを目的とした活動)を行っているという話は一度も聞いたことがありませんが、非ゲームでは仕様書インスペクションを行っているという話をチラホラ耳にします。
しかし、ゲームのほうは場当たり的な活動が多いがゆえにその場面ごとの柔軟性や対応力、判断力などは磨かれていると感じています。私の経験上では、ゲーム系(やそれに近い)出身の人のほうが(最終的には)プロジェクトを上手く着地させることができていました。
ハイブリッドは強い
非ゲーム業界で品質管理に関わっている人はゲーム業界に向かない、とも一概には言い切れません。
Web系やスマホアプリであれば開発スタイルや文化もゲーム業界と近いため、十分キャリアチェンジすることは可能でしょう。
ゲーム業界の品質管理でキャリアアップしていくにあたり、非ゲーム業界での経験は非常に重要になってくるとも考えています。
それはなぜかというと、非ゲームではソフトウェア開発の流れや仕組み、ソフトウェアテストの知識や技術が求められ身につけなければならないためです。
それらはゲーム業界でも通じるスキルであり、ゲーム業界の品質管理でキャリアアップしていきたい場合は必須とも言えるでしょう。
しかし、知識だけ身に着ければよいかというと、そうではありません。
ソフトウェアテストなどの知識体系から『こうすべき』『こうあるべき』と捉えてしまい、業界文化や現場状況などを無視して『あるべき論』を推し進めてしまうと、必ずどこかに歪ができてしまいます。
得た知識をゲーム業界の文化や現場活動にうまく落とし込む必要があるのです。
これはゲームも非ゲームも経験したから出来るというわけでもないため注意が必要です。
まとめ
同じテスト実行者(テスター)だったとしても、ゲーム業界よりも非ゲームの業界のほうが年収が高いケースは多いですが、求められる知識や技術にも差があるため、非ゲームへのキャリアチェンジの際には注意が必要です。
非ゲーム系のときに採用面接を担当していたときにゲーム系出身の求職者の面接もそれなりにしてきましたが、ビジネスマインドやIT全般の知識などが見劣りするケースは多かったです。しかし、柔軟性や対応力、また根性といったものは秀でており、実際採用まで至った人はそれらのスキルを発揮して活躍している人も多くいます。
管理人はいま現在はゲーム業界に身を置いていて、非ゲーム系からの転職希望者の採用面接を担当することがありますが、エンジニア気質が強すぎて協調性に欠けていたり知識や技術はあってもゲーム業界の文化に合わないと感じるケースがあります。
ゲームから非ゲーム、非ゲームからゲームのどちらにしても、業界の文化や特徴、求められるスキルなどをしっかり把握してそれに合わせつつ、自分の強みを織り交ぜていくことで活躍していけるのではないかと考えています。
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