スマホゲームやゲーム業界に一大ムーブメントを巻き起こした『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)のリリースから10年が経ちます。この10年でスマホゲームはよりリッチになりビジネスモデルも確立され、いまやゲーム市場の3分の2はスマホゲームが占めるようになりました。
コンシューマーゲームとスマホゲームは異なる文化を歩み始めましたが、品質管理は昔からの『ゲームデバッグ』の手法から大きな変化は出ていません。しかし、特にスマホゲームでは旧来的なゲームデバッグ手法が合わなくなってきました。
なぜ品質管理に変化が求められているのか、どう変わっていく必要があるのかなどを考えてみたいと思います。
ビジネススピードとデバッグ活動が合わない
パズドラのヒット以降、スマホゲームはよりリッチになり大規模化・複雑化の一途を辿り、いまではスマホゲームの開発費は3~5億円かかることも珍しくありません。
旧来型のゲームデバッグ手法では、品質に関する専門的な知識や技術が求められず人海戦術でゴリ押しするような形でしたが、リリースがゴールになるコンシューマーゲームではそれでもなんとかなっていました。
しかし、スマホゲームではリリースしてからがスタートとも言えます。リリースしてから数年間ゲームの運営が続き、その間に新機能の実装や既存機能の改修、新イベントの開催など、定期的・継続的にアップデートが入ります。
スマホゲームのこのアップデート(ビジネス)サイクルに合わせるためには、ゲームデバッグ手法では無駄が多く品質を測ることも難しいのです。
より効果的・効率的な品質管理を行うには、専門的な知識や技術が不可欠ですが、品質管理においてはそれが『ソフトウェアテスト』と呼ばれるものになるのです。
ソフトウェアテストとは
『ソフトウェアテスト』とは、『ソフトウェア』に対する『テスト』の考え方が体系的にまとまったものになります。テストに関する考え方、進め方、目的、技術などですね。
ゲームは『ゲーム』で『ソフトウェア』ではない、と思われる人もいるかもしれませんが、ゲームもソフトウェアのひとつなのです。
ソフトウェア(英: software)は、コンピューター分野でハードウェア(物理的な機械)と対比される用語で、何らかの処理を行うコンピュータ・プログラムや、更には関連する文書などを指す。
「ソフトウェア」wikipediaより
スマホゲームでは一定のサイクルでアップデートが入り、機能追加や機能の複雑化が進んでいきます。ひとつ機能を追加したり改修するだけでも、それが影響する範囲が大きくなっているのです。そのため、個人の経験や感覚に頼った品質管理をしているとテストの抜け漏れやバグの見逃しに繋がってしまいます。
ソフトウェアテストは基本的には論理的思考となり、機能の追加や改修に伴うテストの目的を定めてテストの計画を立て、どこにどうテストするかテストを設計し、必要な箇所に必要なテストを行っていきます。
また、テスト活動を通して得られる様々な情報を収集・加工し、品質の可視化を行います。
品質状況を可視化することで、これまでの振り返りやこれからの活動を検討するための根拠となります。
非ゲームの業界では一般的
実はこのソフトウェアテストは、ゲーム業界ではまだ比較的新しい考え方ですが、(組み込み系やWeb系など)非ゲーム業界では一般的な考え方なのです。
エンタメ分野のゲームは、リリース後にバグが出てしまったとしても社会的な問題になりづらく、バグや品質が許容されやすい特徴があります。
しかし、非ゲームの分野ではバグひとつが社会的に影響が出てしまうようなソフトウェアも多く、属人的で経験則ではなく論理的なテスト活動が求められてきました。
開発とテストの関係性も、ゲーム業界では暗黙的に上下意識が出ていたりしますが、非ゲーム業界では開発とテストが対等の立場となっています。テストの待遇は非ゲーム業界のほうが良い(給料高い)ですが、その分ソフトウェアテストの知識を当たり前に求められたり、広くIT関係の知識や開発に関する知識が求められるケースもあります。
ゲームデバッグからゲームテストへ
スマホゲーム開発ではソフトウェアテスト型のいわば『ゲームテスト』の手法が主流になってきています。スマホゲーム開発でゲームデバッグ型の手法はどんどん少なくなっていくでしょう。
コンシューマーゲームは最初から多言語化が計画されていたり、リリース後にDLC(ダウンロードコンテンツ)があったりと、一度リリースして終わりとはならないケースも出てきています。
こういった事情やスマホゲームで主流になってきている状況から、コンシューマーゲームでもゲームデバッグからゲームテストの考え方にシフトしてきているように感じます。
ソフトウェアテストは一度身に着けてしまえば業種問わずで活用出来る専門的な知識・技術であり、ソフトウェアテストの認定資格JSTQBを取得することで自身の価値を客観的に上げていくこともできます。
これからのゲームの品質管理は、ソフトウェアテストという体系的な知識や技術を土台として、ゲームというドメインに合わせた独自の『ゲームテスト』文化が作られていくのではないかと考えています。
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